血管新生に関する研究

MS-K肉腫に見られる良好な血管新生

 MS-K細胞株をマウスに移植すると巨大な肉腫を生じます。NFSA細胞株を移植しても同じように巨大な肉腫を形成しますが,肉腫内部の血管新生の様子は大きく事なり,MS-Kでは良好な血管新生が認められるのに対して,NFSA肉腫では内部の血管新生は不良で,肉腫も中心部は壊死を起こしています。血管内皮細胞装飾因子(VEGF)の発現を比較しましたが,2つの細胞株に顕著な差は認められませんでした。それではこの2つの腫瘍に於ける血管新生の違いは何に起因するのでしょうか。これを明らかにする事は,血管新生制御機構の解明に繋がるのではないかと考えました。

 MS-K肉腫,NFSA肉腫それぞれの様子と,それぞれの肉腫から作成した組織切片を血管内皮細胞を特異的に認識する抗体を用いて免疫染色しました。茶色に染まっているのが,血管です。MS-K肉腫では良好な血管形成が認められるのに対して,NFSA肉腫では血管ん新生が不良で内部の細胞が抜けている(壊死を起こしている)のが判ります。(写真は,Genes Cells, 19,112-125, 2014より)

IL-18によって活性化されたマクロファージが血管内皮細胞を傷害する

 MS-K, NFSA細胞の遺伝子発現をマイクロアレイを用いて網羅的に解析すると,炎症に関与するIL-18の遺伝子発現がNFSA細胞で有意に高い事が判明しました (MS-Kにおける発現は殆ど認められませんでした)。これまでに,NFSA肉腫ではNFSA細胞の産生するIL-18がここに集まる炎症に関係するM1マクロファージを活性化することが判りました。活性化されたマクロファージでは,NO(一酸化窒素)産生酵素遺伝子,tnf-alpha, interleukin-6の遺伝子発現が上昇します。さらにこの活性化されたマクロファージは血管内皮細胞を傷害する事も判りました。これがNFSA肉腫に於ける血管新生が不良であった1つの理由であると考えられます。(BMB Rep., 2014,47(5):286-291.),この他に,MS-Kに於ける良好な血管新生には,MS-Kの産生するFGF10も関係することが判りました(Genes Cells, 19,112-125, 2014)
 研究はまだ続いています。

MS-K細胞は当研究室で樹立した細胞株です。

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