栓球細胞に関する研究

その名はFUHEN細胞

 アマガエルの長期骨髄培養から栓球細胞株を樹立しました。A frog-derived unique hematopoietic non-adherent (FUHEN) cell lineです。この細胞株は,増殖すると共に成長してその形を大きく変え紡錘形になります。通常の細胞は15µm程度ですが,巨大化した細胞は40µm以上にもなります。このように大きく形を変化させる細胞に対してFUHENと名付けました。(細胞の命名権は樹立者にあります)

 位相差顕微鏡で見たFUHEN細胞の写真です。未熟なとき(小さいとき)は球形で葡萄の房状に接着しながら増殖しますが,大きくなると巨大な紡錘形の細胞になります。巨大化に伴って核相が16Nにもなり,遺伝子発現を解析した結果,巨核球に特異的なcd41を発現している事が判りました。哺乳類では巨核球が産生する血小板が止血に重要な役割を果たしますが,哺乳類以外の脊椎動物には血小板はなく,thrombocyteと呼ばれる細胞が止血に関与します。この細胞は両生類で始めて樹立されたthrombocyte細胞株です。


FUHENの謎

 FUHENの核をDAPIで染色して観察すると,このように見えます。大きな細胞には写真の様なリング上の核の構造が複数認められますが,これがどの様な意味を持つのかは,まだよくわかっていません。
 FUHEN細胞の大きな魅力は,この細胞が試験管の中で増殖し続ける能力を有するのと同時に,巨大な細胞に分化(成長)する能力を有していることです。つまり,この細胞は自己複製すると同時に,分化する事も可能なのです。これは造血幹細胞が自己複製する能力を持ち,かつ全ての血液細胞に分化出来る能力を有しているのと似ていると考えられます。細胞が「自己複製」に向かうか,「分化」に向かうかを制御している決定的な因子を,この細胞を使えば解明出来るかもしれません。

FUHEN細胞の樹立に関する論文はSpringerPlusという雑誌で掲載されることが決定しています(2015)。

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