アサガオのつぼみは、つるが左巻きにらせんを描くのに対して、反対巻きの右巻きにねじれているが、このねじれがほどけるようにして開花する。開花前日のつぼみを切り取って、水にさしておいても(図F111)、つぼみは正常に開く(図F112)。このような性質のため、室内で開花の様子を観察することができる。

図F111.開花前日に切り取って、水にさしたアサガオのつぼみ。

図F112.切り取って、水にさしたアサガオのつぼみは正常に開く。
開花は花弁の急激な成長による。1枚の花弁でも、内側の成長速度の方が外側の成長速度よりも速い。このような偏差成長のために、花弁は外側に反りかえりながら成長するので、結果としてつぼみは開く。
アサガオの漏斗状の花は5枚の花弁が融合したものだが、それぞれの花弁の中央に、放射状の厚めの組織が走っている。このような組織は一般には中肋と呼ばれるが、アサガオでは特に曜と呼ぶ。開花前日の夜に、つぼみから曜だけを残して他の花弁組織を切り取ってしまっても、それぞれの曜は外側に反りかえり、翌朝には正常な開花と同じ様子を見せる。つまり、開花とは、中肋が外側に向かって偏差成長することなのである。
花弁の急速な成長は花弁を構成する細胞の容積の増大による。花弁細胞の容積の急速な増大は、サツキツツジなどの研究によれば、細胞内のデンプン粒が糖に分解されて浸透圧が高まり、そのために細胞内に水が取り込まれることで起こるようだ。
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