アサガオの生理学
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花成生理学用語集
花成生理学用語集 新潟大学理学部・和田清俊(2002)

暗期(dark period, nightlength):
24時間の昼夜あるいは明暗サイクルのうちの夜あるいは暗の長さ。「日長」に対する語だが、「夜長」という言い方はしない。英語ではnightlengthと一語で書くが、night lengthと二語で書くこともある。
アンテシン(anthesin):
仮想の花成誘導物質。Chailakyanによって、 フロリゲンはジベレリンとアンテシンから成ると提唱されたが、今日顧みられることはない。
花芽形成
「かがけいせい」または「はなめけいせい」。「花成」と同じ。
花成(flowering, flower formation):
栄養成長から生殖成長への転換。具体的には花芽原基の分化を指す。「催花」やanthogenesisという語は今日使われることはない。完成した蕾が開く「開花」は花成が済んだ後に起こる別の現象である。
花成刺激(flowering stimulus):
光周的花成において、適当な光周期のもとに置かれた葉で生じると想定される、花成を誘導する要因。物質として仮想した場合の花成刺激の一つの可能性がフロリゲンである。
花成ホルモン(flowering hormone):
「フロリゲン」と同じ。
花成誘起(floral evocation):
花成において、茎頂が花成刺激に反応して花芽原基を作るべく運命づけられる素過程。
花成誘導(flower induction, flower initiation):
花成において、日長や温度などの環境要因に反応しておこる、葉で花成刺激を生成する素過程。花成誘導に引き続いて花成誘起が起こる。花成誘導から花成誘起の一連の過程が花成であるから、「花成誘導」と「花成の誘導」は意味が異なる。日本語では「誘導」と「誘起」はほぼ同義だが、「花成誘導」はflower induction(flower initiationと同義)に対して、「花成誘起」はfloral evocationに対して用いられる。
花成誘導物質(flower-inducing substance):
花成を引き起こす物質。厳密には、花成誘導の結果生じ、花成誘起を引き起こす物質、または、これと同じ作用を持つ物質。適当な光周期の下で作られる天然の花成誘導物質がフロリゲンに相当する。
限界暗期(critical nightlengt, ctitical night, critical dark period):
長日植物の花成を阻害するのに必要な暗期の時間、または、短日植物の花成を誘導するのに必要な暗期の時間。暗期の長さが限界暗期を超えれば、長日植物は花成を阻害され、短日植物は花成を誘導される。24時間から限界日長を差し引いたものが限界暗期になる。光周的花成を制御するのは日長ではなく、暗期であるから、限界日長ではなく限界暗期を用いるべきである。
限界日長(critical daylength, critical day, critical photoperiod):
長日植物の花成を誘導するのに必要な日長時間、または、短日植物の花成を阻害するのに必要な日長時間。日長時間の長さが限界日長を超えれば、長日植物は花成を誘導され、短日植物は花成を阻害される。「臨界日長」の語はもはや使われない。
光周期(photoperiodic cycle):
24時間の昼夜あるいは明暗サイクル。
光周性(photoperiodism):
光周期に反応する性質。光周性にもとづく反応の一つに光周的花成がある。
光周的花成(photoperiodic flowering):
光周期に反応して引き起こされる花成。
条件的短日植物(facultative short-day plants, quantitative short-day plants):
短日条件で花成を促進される植物。短日条件でなくてもいずれは花成が起こる。反意語は「絶対的短日植物」。
条件的長日植物(facultative long-day plants, quantitative long-day plants):
長日条件で花成を促進される植物。長日条件でなくてもいずれは花成が起こる。反意語は「絶対的長日植物」。
条件的反応(facultative response, quantitative response):
光周期または低温で促進される花成反応。適当な光周期または温度条件に置かれれば花成は早まるが、光周期または温度条件にかかわらずいずれは花成が起こる場合を言う。反意語は「絶対的反応」。
ストレス誘導花成(stress-induced flowering):
低温、栄養欠乏、強光などのストレスに反応して引き起こされる花成。アサガオとウキクサ類で知られている。
絶対的短日植物(absolute short-day plants, qualitative short-day plants, obligatory short-day plants):
花成が短日条件に絶対的に依存する植物。適当な光周期に置かれなければ、決して花成は起こらない。反意語は「条件的短日植物」。
絶対的長日植物(absolute long-day plants, qualitative long-day plants, obligatory long-day plants):
花成が長日条件に絶対的に依存する植物。適当な光周期に置かれなければ、決して花成は起こらない。反意語は「条件的短日植物」。
絶対的反応(absolute response, qualitative response, obligatory response):
光周期または低温に絶対的に依存する花成反応。適当な光周期または温度条件に置かれなければ、決して花成は起こらない場合を言う。反意語は「条件的反応」。
脱バーナリゼーション(devernalization):
低温による花成(バーナリゼーション)において、低温直後の高温によって花成を誘導する効果が失われること。
多要因説(multifactorial theory):
花成はフロリゲンのような特殊な物質によって引き起こされるのではなく、ショ糖、カルシウムイオン、ポリアミン、サイトカイニンなどの複数の要因が揃ったときに引き起こされるとする説。
短日条件(short-day condition):
短日植物にとっては花成を誘導される光周期条件、長日植物にとっては花成を阻害される光周期条件。実際の明期/暗期の長さは種によって異なる。実験的には、明期8時間/暗期16時間のサイクルが短日条件として用いられることが多い。この条件では、ほとんどの短日植物が花成を誘導され、ほとんどの長日植物が花成を阻害されることが知られている。
短日植物(short-day plants):
暗期の長さがある一定の時間より長いとき(日長時間がある一定の長さより短いとき)花成を誘導される植物。
短長日植物(short-long-day plants):
短日条件に引き続いて長日条件に置かれたときに花成を誘導される植物。
長日条件(long-day condition):
短日植物にとっては花成を阻害される光周期条件、長日植物にとっては花成を誘導される光周期条件。実際の明期/暗期の長さは種によって異なる。実験的には、明期16時間/暗期8時間のサイクルが長日条件として用いられることが多い。この条件では、ほとんどの短日植物が花成を阻害され、ほとんどの長日植物が花成を誘導されることが知られている。
長日植物(long-day plants):
暗期の長さがある一定の時間より短いとき(日長時間がある一定の長さより長いとき)花成を誘導される植物。
長短日植物(long-short-day plants):
長日条件に引き続いて短日条件に置かれたときに花成を誘導される植物。
中間植物(intermediate-day plants):
暗期の長さがある一定の時間のときのみ花成を誘導される植物。例えば、オカヒジキ(Salsola komarovii)のように、暗期の長さが12時間前後のときに花成が起こり、12時間より長くても、短くても花成が遅れる植物。短日植物の反応の一変形である。
中性植物(day-neutral plants):
花成が光周期に依存しない植物。
抽だい(bolting):
ロゼット植物が茎を伸長させること。長日植物または低温要求性植物の花成時に起こる。
低温要求性植物(cold-requiring plants):
バーナリゼーションを行う植物。
日長
「明期」と同じ。花成に関しては、曇り空の昼や日の出前・日没後の薄明も光として感知され、「日長」と認識されるので、太陽光が照射されていることを意味する「日照」とは異なる概念である。
バーナリゼーション(vernalization):
低温によって誘導される花成。春化とも呼ぶ。
バーナリン(vernalin):
バーナリゼーションにおいて、低温に反応して作られると仮想された花成誘導物質。今日、ほとんど話題にされない。
光中断(night interruption, night break):
「ひかりちゅうだん」または「こうちゅうだん」。暗期の中間に与えられた短い光照射で暗期の効果が失われること。限界暗期を越える暗期に対する光中断は短日植物の花成を阻害し、長日植物の花成を誘導する。
フロリゲン(florigen):
適当な光周期に反応して葉で生産され、茎頂へ輸送されて、花成を誘導すると想定される化学的花成刺激。「花成ホルモン」とも呼ぶ。古くは「開花ホルモン」とも呼ばれたことがある。
明期(photoperiod, daylength):
24時間の昼夜あるいは明暗サイクルのうちの昼あるいは明の長さ。英語ではdaylengthと一語で書くが、day lengthと二語で書くこともある。photoperiodは「明期」であって、「光周期」を意味しない。
両日性殖物(ambiphotoperiodic plants):
ある一定時間より短いか、または、それとは異なるある一定時間より長い日長条件のときに花成を誘導される植物。例えば、Madia elegans のように、日長時間が14時間より短いか、18時間より長いかのどちらでも花成を誘導される植物。極めて稀である。

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