アサガオの生理学
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アサガオの茎伸長
茎伸長

 普通のアサガオは細い茎を長く伸ばして他物に巻きついてゆく。ところが、つるにならない、背丈の低い、木立という突然変異体がある(図G111)。木立は植物生理学ではキダチと表記するので、ここでもキダチと書くことにする。キダチは茎伸長だけが抑制された突然変異体で、葉の数や大きさ、花の咲き方などは正常である。茎伸長は植物ホルモンの一種であるジベレリンで促進される。ジベレリンを欠損した突然変異体では、茎が正常に伸長せず、矮性となる。キダチがジベレリン生合成に欠陥を持つ矮性突然変異体であることは、内生ジベレリン含量が野生型より少ないこと、外からジベレリンを与えれば、野生型と同じ背丈に回復することから明らかである。

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図G111.アサガオの矮性突然変異体、キダチ。

重力屈性

 正常なアサガオは重力に逆らって上へ上へとつるを伸ばしてゆく。支柱を外せば、自分の重みで垂れ下がるが、しばらくすると、先端は重力に逆らって上をむく(図G121)。これは負の重力屈性である。上に昇れずに、つるが下に垂れ下がってしまう突然変異体がある(図G122)。枝垂れアサガオという。支柱が無いから垂れ下がっているわけではないことは、先端もまっすぐ下を向いていることからわかる。枝垂れアサガオの根がどのような伸び方をしているかはよくわからない。
 重力屈性は植物一般に見られる。植物を横に倒すと、茎は重力の方向と反対方向に曲がって立ち上がる。重力屈性は偏差成長で起こる。茎では、重力の側の細胞がより成長して、結果として、反対方向に曲がって立ち上がる。偏差成長は植物ホルモンの一種、オーキシンの不均一な分布が原因で起こる。植物を横にすると、オーキシンは下側へ移動する。下側の方がオーキシン濃度が高くなるから、茎では下側の方が成長量が大きくなり、上に向かって曲がる。しかし、根の先端でも、茎の先端と同じことが起こっているが、根の先端はオーキシン濃度が高い下側へ曲がる。この根の反応はオーキシン濃度に対する反応の違いによって説明できる。根は高濃度のオーキシンによってむしろ成長を阻害されるのである。従って、根では、オーキシン濃度が高くなる下側の方が成長量が小さくなり、下に向かって曲がる。オーキシンの不当分布による偏差成長は光屈性でも見られる。光屈性では、光があたると、反対側にオーキシンの移動が起こって不当分布が起こるとされている。
 枝垂れアサガオは重力の方向を感じることができない突然変異体と思われる。平衡細胞がないのかどうかなどはわかっていない。

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図G121.支柱を外されたアサガオのつるは垂れ下がるが、やがて、先端は立ち上がる。

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図G122.アサガオの枝垂れ突然変異体。


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