アサガオの生理学
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アサガオの頂芽優勢
頂芽優勢

 アサガオでは、1本の茎が伸長して、花は下から1個ずつ咲いて行く。茎の先端には頂芽があって、頂芽が茎と葉を作りながら、植物は伸長して行く。葉のつけ根には新しい芽(側芽または腋芽)が作られるが、この側芽は花芽に分化しなければ葉芽になり、葉芽は成長すれば枝になるが、普通は頂芽だけが活発に成長し、側芽は成長しないので、枝分かれすることはない。このような頂芽優勢は、頂芽の影響で側芽の成長が抑制されるために起こる現象である。
 頂芽が傷ついたり、除去(摘心)されると、頂芽の影響が失われるので、側芽は成長抑制から解き放たれて成長を始める。
 京都の伝統的なアサガオの仕立て方に、つるを伸ばさずに、こんもりとした株に仕立て、1株にたくさんの花を同時に咲かせる数咲きづくりがある(図G211)。これは、頂芽優勢が起こらないようにして、人為的に枝分かれを引き起こし、たくさんの枝の上に花をつけさせたものである。
 主茎(親づる)を切って、頂芽を取り除くと、腋芽が成長を始めて枝分かれが生じる。この子づるの先端は新しく頂芽として働き、子づる上の側芽は成長しない。しかし、子づるの先端も切ってしまうと、子づるの側芽が成長を始めて孫づるが生じる。こうして何本にも枝分かれしたアサガオができる。孫づるに花芽を作らせれば、1株のアサガオにたくさんの花を咲かせることができる。

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図G211.京都の数咲きづくり。

頂芽優勢と植物ホルモン

 頂芽優勢という現象は植物一般に普通に見られる。頂芽を切除すると、腋芽が伸び出すが、このとき、頂芽を切り取った切り口に植物ホルモンの一種、オーキシンを与えると、腋芽は伸び出さない。オーキシンは腋芽の成長を抑制するのである。頂芽はオーキシンを作っており、そのために腋芽は成長できない。これが頂芽優勢である。別の植物ホルモン、サイトカイニンを腋芽に与えると、頂芽を切り取らなくても腋芽は伸び出す。頂芽優勢に関してサイトカイニンはオーキシンと拮抗する。複数の植物ホルモンが互いに拮抗したり、協調したりして、植物の生長を調節している。


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