研究と教育

研究

1. 産卵回遊魚の海洋環境適応の脳内メカニズム

魚類は様々な産卵リズムを持っており、光や温度などの環境要因と間脳の神経内分泌系から分泌される様々な神経ホルモンによって調節されていると考えられていますが、その仕組みはよく分かっていません。クサフグは、春から夏にかけて2週間に1回、新月と満月の満潮前に海岸で集団産卵をします。この特徴的な半月周性産卵リズムを調節するしくみについて、時計関連遺伝子、松果体ホルモン、生殖調節神経ホルモン、脳脊髄液タンパク質などに焦点をあてて研究を行っています。詳しい研究内容・成果

02.クサフグ産卵

海岸の一画で集団産卵するクサフグ。潮位差の大きい太平洋側では大潮の日の満潮前に産卵するのですが、潮位差が小さい佐渡ではこのようなリズムが弱いようです。産卵リズムの調節機構についてはまだよくわかっていません。


2. 通し回遊性魚類の生態学

一生の間に海と川を行き来する通し回遊現象は、魚など多くの生物でみられます。水に棲む生物にとって大きな障壁となる塩分の違いを超えて、なぜ回遊するのか、その意義は未知の部分が多いと言えます。主にハゼ亜目魚類を対象として、野外生態調査、飼育実験、微量元素分析、遺伝的な集団構造の解析などにより、生まれてから死ぬまでの各生活史段階における移動・分散・滞留の動態を明らかにし、通し回遊現象の理解につなげたいと考えています。詳しい研究内容・成果

04.ハゼ

海から川へ加入してくるハゼ類。成魚が川にいる魚の中にも、生まれてからしばらくの間は海で過ごすものが多数知られています。


3. 棘皮動物の進化発生と自然史学

ウミユリ類はウニやヒトデと同じ棘皮動物というグループの無脊椎動物です。成体に茎がある有柄ウミユリと成体には茎がないウミシダに大きく分けられ、どちらもウニやヒトデよりも古い体のつくりを残しています。ウミユリ類の体のつくりが発生過程でどのように形成されていくのか、ウミユリ類が進化の過程でどのようにしてその体のつくりを獲得したのかを、組織構造の詳しい観察やゲノムなどの分子情報の解析により明らかにしようとしています。 また、日本の海には100種以上のウミシダが生息するとされていますが、一見しただけでは分類するのが難しいことがあります。形や色だけでは分類が難しいウミシダについて、遺伝子解析などの手法を用いて分類をやり直す研究を進めています。 佐渡島周辺の海には、最近新種記載されたサドナデシコナマコを始め、興味深い無脊椎動物がたくさん生息しています。これらの無脊椎動物の発生学および自然史学的研究にも取り組んでいます。詳しい研究内容・成果

ウミシダ

ウミシダの一種ニッポンウミシダ(左)とその座着幼生(右)。ウミユリ類にはウニやヒトデと異なり複雑な体の動きを制御する神経節があることがわかっており、その発生における形成過程の解明も研究テーマの一つです。


4. 甲殻類の性差構築と幼生変態の分子メカニズム

淡水性甲殻類のミジンコは生息環境によって生まれてくる子供の性が決まります。また、クルマエビやワタリガニなどの一部の海産甲殻類は孵化したときは成体と全く異なる姿をしています。このように、ミジンコ、ザリガニ、クルマエビ、ケガニなどの様々な甲殻類を研究対象とし、甲殻類の性差構築機構や幼生変態のメカニズムについてホルモンの機能解析やオミクス解析から研究を進めています。詳しい研究内容・成果

甲殻類

(A) ミジンコ Daphnia pulexのオス(左)とメス(右), (B) ケガニ Erimacrus isenbeckii, (C) クルマエビMarsupenaeus japonicusの幼生変態過程。

教育

1. 講義と臨海実習

臨海実験所の教員は、新潟大学理学部理学科のフィールド科学人材育成プログラムおよび生物学プログラムの学部教育に携わるとともに、地質プログラム、自然環境科学プログラムなどの野外実習も当該プログラムの引率教員と共同して担当しています。また、海洋と海洋生物についての高度な知識をもった人材の育成を目指して、自然科学研究科の大学院生を対象とした大学院教育も行っています。

このような学内の学生を対象とした臨海実習の他に、他大学大学生を対象とした公開臨海実習や他大学の共同利用による臨海実習も行っています。佐渡島という離島ならではの豊かな自然環境と生物相を利用して、主に海洋生物の多様性や進化、生理生態について学びます。また、佐渡島には、新潟大学佐渡自然共生科学センターの森林領域/演習林、里山領域/朱鷺・自然再生学研究施設、海洋領域/臨海実験所が揃っており、これらの3施設、さらには佐渡市とも連携して森里海をつなぐ離島生態系についての実習も行っています。

(04-1.磯採集.jpg)

シュノーケリングによる磯生物採集

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シュノーケリングによる磯生物採集で観察もしくは採集できる生物。
上段左から、シロウミウシ、アメ フラシ、キリンアナハゼ。
下段左から、ヤマトホンヤドカリ、イトマキヒトデ、色とりどりの海藻類。
これ以外にもたくさんの磯生物を観察、採集 することができます。

(05. プランクトン採集.jpg)

実習船でのプランクトン採集。採集したプランクトンは顕微鏡で観察します。

(06. ウニ発生.jpg)

ムラサキウニの発生実験(採精、採卵の様子)。左:雄個体と精子、右:雌個体と卵

(07. 灯火採集.jpg)

夜間の岸壁での灯火採集。
シュノーケリングによる磯生物の採集とは違った主に夜行性の生物が採集できます。

(08. 方形枠調査.jpg)

磯の生物の方形枠調査。異なる水深に設置した方形枠の枠内の生物を採集し、
生物の分類を行った後に、水深と生物相との関係を調べます。

(09. ドレッジ採集)

砂泥海岸(沢根)でのドレッジ採集。
スコップで泥をすくい、ザルでこすと砂泥底の生物が採集できます。

(10. 海藻標本作製)

春の実験室内での海藻標本作成。日本海の荒波で育つ海藻類は佐渡の特産物の一つです。
色とりどりの海藻を使って標本を作成します。

(11. 水田.jpg)

生物多様性に配慮された水田の見学。運が良ければ野生復帰したトキが見られるかも!

2. 海洋教育・啓発活動

臨海実験所は、大学生対象の臨海実習以外にも、佐渡島における海洋教育や啓発活動に積極的に関わっています。例えば、佐渡市の小中学生を対象として体験学習や出前授業、臨海実習を行っています。また、平成23年度と24年度には、佐渡博物館との共催によって、臨海実験所の生物標本と解説パネルを用い、海洋生物をテーマとした企画展示を行いました。

(12. イカ解剖.jpg)

佐渡の特産物スルメイカを用いた解剖実習

(13. 佐渡博物館1.jpg)

平成24年度の佐渡博物館での展示「佐渡の海の生きもの展軟体動物の世界」

(14. 佐渡博物館2.jpg)

平成24年度の佐渡博物館での展示の様子。