魚類は様々な産卵リズムを持っており、光や温度などの環境要因と間脳の神経内分泌系から分泌される様々な神経ホルモンによって調節されていると考えられていますが、その仕組みはよく分かっていません。クサフグは、春から夏にかけて2週間に1回、新月と満月の満潮前に海岸で集団産卵をします。この特徴的な半月周性産卵リズムを調節するしくみについて、時計関連遺伝子、松果体ホルモン、生殖調節神経ホルモン、脳脊髄液タンパク質などに焦点をあてて研究を行っています。
詳しい研究内容・成果
一生の間に海と川を行き来する通し回遊現象は、魚類など多くの生物でみられます。水に棲む生物にとって大きな障壁となる環境の違いを超えて、なぜ回遊するのか、その意義は未知の部分が多いです。ハゼ亜目魚類などを対象として、野外調査、飼育実験、微量元素分析などにより、各生活史段階における生態や、それらと環境との関わりについて、研究を行っています。また、海洋の基礎生産を担うプランクトンの動態に関する研究にも取り組んでいます。
詳しい研究内容・成果
ウミユリ類はウニやヒトデと同じ棘皮動物というグループの無脊椎動物です。成体に茎がある有柄ウミユリと成体には茎がないウミシダに大きく分けられ、どちらもウニやヒトデよりも古い体のつくりを残しています。ウミユリ類の体のつくりが発生過程でどのように形成されていくのか、ウミユリ類が進化の過程でどのようにしてその体のつくりを獲得したのかを、組織構造の詳しい観察やゲノムなどの分子情報の解析により明らかにしようとしています。 また、日本の海には100種以上のウミシダが生息するとされていますが、一見しただけでは分類するのが難しいことがあります。形や色だけでは分類が難しいウミシダについて、遺伝子解析などの手法を用いて分類をやり直す研究を進めています。 佐渡島周辺の海には、最近新種記載されたサドナデシコナマコを始め、興味深い無脊椎動物がたくさん生息しています。これらの無脊椎動物の発生学および自然史学的研究にも取り組んでいます。
詳しい研究内容・成果
なわばりを持つ魚類は数多く知られていおり、なかでも沿岸・岩礁性魚類や子育てをおこなうカワスズメ科魚類ではなわばりを共有する配偶者や子供と隣人、侵入者を識別し、それらに対して異なる社会行動をとることが報告されています。ところが、これらの魚類がどのような特徴を手掛かりに相手を識別しているのか、また、個体特有の特徴や認知能力をどのような過程で獲得し、いつ社会行動をはじめるのかについては分かっていないことが多くあります。フィールド観察や水槽実験を通じてこれらの疑問を検証し、魚類でみられる社会行動や社会的認知のもつ意義や生活史との繋がりをより深く理解したいと考えています。
臨海実験所の教員は、新潟大学理学部理学科のフィールド科学人材育成プログラムおよび生物学プログラムの学部教育に携わるとともに、地質プログラム、自然環境科学プログラムなどの野外実習も当該プログラムの引率教員と共同して担当しています。また、海洋と海洋生物についての高度な知識をもった人材の育成を目指して、自然科学研究科の大学院生を対象とした大学院教育も行っています。
このような学内の学生を対象とした臨海実習の他に、他大学大学生を対象とした公開臨海実習や他大学の共同利用による臨海実習も行っています。佐渡島という離島ならではの豊かな自然環境と生物相を利用して、主に海洋生物の多様性や進化、生理生態について学びます。また、佐渡島には、新潟大学佐渡自然共生科学センターの森林領域/演習林、里山領域/朱鷺・自然再生学研究施設、海洋領域/臨海実験所が揃っており、これらの3施設、さらには佐渡市とも連携して森里海をつなぐ離島生態系についての実習も行っています。
臨海実験所は、大学生対象の臨海実習以外にも、佐渡島における海洋教育や啓発活動に積極的に関わっています。例えば、佐渡市の小中学生を対象として体験学習や出前授業、臨海実習を行っています。また、平成23年度と24年度には、佐渡博物館との共催によって、臨海実験所の生物標本と解説パネルを用い、海洋生物をテーマとした企画展示を行いました。