教員の受賞・表彰
工藤 久昭 准教授(化学科) ― 日本物理学会論文賞
2006年3月
受賞者:工藤 久昭 准教授(共同研究、他19名)
賞の発行:日本物理学会
賞の名称:日本物理学会論文賞
賞の位置づけ:「独創的な論文により物理学に重要な貢献をした功績を称える」ことを目的として制定
受賞の名称:Experiment on the Synthesis of Element 113 in the Reaction 209Bi(70Zn,n)278113
(209Bi(70Zn,n)278113反応による113番元素合成に関する実験)
受賞日時:2006年3月
日本物理学会による受賞理由
この論文は新しい超重元素(Z=113)の発見を報告したものである。著者らは70Zn
ビームと209Bi標的核による融合反応を使い超重元素278113を1個合成することに成
功した。その測定した1事象が間違いなく新しい超重元素(Z=113)であると同定で
きることを極めて説得力のある形で報告している。論文では、合成した278113を位置
敏感型半導体検出器に埋め込み、それが4つのa崩壊チェインを経て自発核分裂する
一連の崩壊過程を、それぞれの粒子について崩壊粒子エネルギー、崩壊時間、崩壊位
置の精密測定から同定したことが生き生きと記述されている。特に、4番目のa崩壊
が、既知の266Bhから262Db核へのa崩壊過程のエネルギーや寿命とよく一致し、さら
に262Db核の自発核分裂の寿命とも一致することが、この発見報告の信頼性を高めて
いる。
本論文の意義は、周期表の113番目の元素を始めて確実に合成しその存在を示した
ことである。そしてこの研究の成果は、今後の超重元素生成とそれに用いた研究の手
法の展開に指針を与えるもので、核物理の分野にとどまらず、原子物理、化学などの
新領域の開拓にもつながると期待される。よって本論文の業績は論文賞に相応しいと
判断した。