研究紹介

岩崎研究室(植物学系)

教員

研究分野

植物分子生物・生理学

研究テーマ

  1. 植物細胞におけるタンパク質の核-細胞質間輸送機構の解明
  2. RNAポリメラーゼⅡ付随複合体(Paf1C)の植物における機能の解明

研究概要

 興味の中心は植物細胞の全能性です。全能性とは個体全体を作り上げる能力のことで、多細胞生物の受精卵に備わっています。動物の受精卵の全能性は発生が進むにつれて失われ、特定組織の細胞にのみ分化する限定された分化能(分化多能性)が少数の細胞群(幹細胞)に残されるだけになります。これに対して植物では、分化した1個の体細胞(あるいはプロトプラスト)が分裂して脱分化した細胞塊(カルス)を形成し、これから個体が再生する例が数多く報告されていることからわかるように、分化した体細胞の多くが全能性を保持しています。

 細胞の形質発現を支配しているのは核です。真核生物では、核膜に包まれた核内で転写されて成熟したmRNAが核膜孔を通って細胞質に輸送され、細胞質に存在するリボソームでタンパク質に翻訳されます。核にはクロマチン(染色質)を構成するヒストンやその他の構造タンパク質のほか、複製・転写などの核機能を担う多くの核タンパク質が存在しますが、これらが核内で機能するためには合成の場である細胞質から機能する場である核内に核膜孔を通って輸送される必要があります。このために、酵母から動植物までの真核生物には、インポーチンとよばれる輸送タンパク質が関わる核-細胞質間輸送機構が存在します。特定のタンパク質の核輸送を調節することで細胞の分化を調節することが可能で、実際にそういうしくみが知られています。また、細胞の分化には、ヒストン修飾などによるクロマチン構造の変化を通じた遺伝子発現パターンの変化(エピジェネティクス)が関係しています。

 当研究室では、植物細胞におけるタンパク質の核-細胞質間輸送機構の解明と、植物の新奇な核タンパク質を探索する過程で見いだした核タンパク質複合体Paf1C(mRNA転写伸長とヒストン修飾の調節への関与が知られている)の植物における機能の解明を目指して研究を行っています。

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