研究紹介

原子核理論研究室

教員

研究分野

原子核・ハドロン物理学(理論)

研究テーマ

  1. 高エネルギーハドロン反応と核子の内部構造の研究
  2. 原子核の集団運動の研究
  3. フェルミ粒子多体系の非平衡ダイナミクスの研究

研究概要

 自然界に存在する4つの力のうち、核力(核子間にはたらく相互作用)に代表される「強い相互作用」によって支配される量子力学的な多体系の構造・反応を理論的に研究しています。クォークとグルーオンの多体系であるハドロン(*注)、およびハドロンの多体系である原子核、さらには、これらの凝縮系である核物質を研究対象として、国際水準の活発な研究を展開しています。

 核子内部でのクォークやグルーオンの分布の様子は、核子を壊す超高エネルギー電子―核子、核子―核子衝突実験によって見ることができます。電子や核子には磁気の起源になる「スピン」と呼ばれる物理量がありますが、スピンの向きをそろえた電子や核子を用いた実験により、スピン非対称など種々の不思議な現象が米欧の加速器実験で見つかっています。クォークとグルーオンの力学の基礎理論である「量子色力学」を用いてこれら現象の発現メカニズムを解明し、それを通して、核子内部でのクォーク・グルーオンの存在の様子を探っています。

 物質を構成する原子の中心に存在する原子核は、ほぼ1:1の割合の中性子と陽子から構成されています。最近、理研の加速器実験施設RIBFに代表される世界各地の実験施設では、その比を人工的に変化させることができるようになってきました。極端な比をもつエキゾチック核での新しいタイプの超流動・超伝導性や変形などの多体相関、さらに多数の核子が一斉に運動するような新奇な集団運動の発現可能性を理論的に追究することで、核子多体系としての原子核の本性を探っています。

 ところで、中性子と陽子の比が非常にアンバランスな原子核や陽子の数が非常に大きい原子核(超重元素)を実験的に生成することは大変難しく、理論計算による予測が欠かせません。私たちは、時間に依存する量子多体問題を数値的に直接解くことによって、コンピューター上で原子核の反応・ダイナミクスを予言することにも取り組んでいます。また、同様の手法によって、相互作用やスケールの異なるフェルミ粒子多体系を調べることもでき、物性・凝縮系理論にも関わる、学際的な研究を展開しています。

 (*注) 強い相互作用をする粒子をまとめて「ハドロン」と呼ぶ。核子(陽子と中性子)やその仲間の「重粒子(バリオン)」と、π中間子やその仲間の「中間子(メソン)」に分けられる。

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