研究紹介

摂待研究室

教員

研究分野

物性物理学・重い電子系の物理

研究テーマ

  1. 新物質探索・純良単結晶育成
  2. 磁性体・超伝導体
  3. 低温・強磁場・高圧力環境での物性測定
  4. de Haas-van Alphen 効果測定

研究概要

 物理と聞けば、宇宙や素粒子のことを思い浮かべるかもしれません。しかし、10$^{23}$個という莫大な数の原子で構成されている物質中では素粒子の性質を調べただけでは理解できない現象がたくさんあります。物質中で起こる様々な物理現象を調べる学問が物性物理学です。対象とする現象は超伝導や磁性です。多くの磁性体や超伝導体が産業応用されていますが、そのメカニズムが完全に理解されているわけではありません。例えば、身近な鉄の強磁性状態の起源ですら完璧な理解はできていません。

 私たちの研究室では、まず始めに物質の作製から行います。物質の本質的な性質を知るためには、純良で方位のそろった単結晶 (写真) が必要となり、それぞれの物質に適した育成方法を用います。そうして得られた結晶の組成分析・結晶構造解析を行い、素性を明らかにします。対象としている物質は主に周期表の下の方に書かれている原子番号50-70のランタノイド (希土類) 元素を含んだものです。これらの元素の特徴はf電子を最外殻にもつことです。このf電子が磁性や伝導に寄与することで興味深い現象が発現します。

 f電子の磁性は1 $\sim$ 10 K (-270 $\sim$ -260 $^{\circ}$C) 程度で現れるような非常にエネルギースケールの小さな現象で、外部からの刺激でf電子の状態は簡単に変わってしまいます。例えば、圧力をかけると磁性がなくなります。ちょうど磁性がなくなったところを量子臨界点と呼び、低温で量子力学的なゆらぎが発達し、従来の考えでは説明できないような超伝導現象をはじめ興味深い現象が観測されています。そこで私たちは極低温・高圧力・高磁場という複合的な極限環境下において電気抵抗・磁化率・比熱などの物性測定を行い、量子臨界点近傍の新奇な物性を実験的に発見し明らかにすることを目標としています。また、物質 (金属) の顔とも言われ、電子状態を決定づけている「フェルミ面」を観測するドハース-ファンアルフェン (de Haas-van Alphen) 効果の実験を行っています。

理学を目指すあなたへ

 一見複雑な自然現象も単純な法則から出発し、現実的な修正や新たな要素の付加によって紐解くことができます。あるいは全く新しい概念が必要になることもあるでしょう。物事の本質を考えるプロセスを理学を学んで身につけてください。