研究紹介
安東研究室
教員
研究分野
生殖内分泌学、神経内分泌学
研究テーマ
- 産卵回遊魚の海洋環境への適応の脳内メカニズムの解明
- 魚類の成長から生殖への転換機構の解明
- 海洋動物の適応統合生物学
研究概要
サケやウナギなど大洋から川にかけて産卵回遊する魚は、大きく変化する海洋環境に適応しながら成育しています。動物がそれぞれの生息環境に合わせて成長し、性成熟の後に繁殖して次世代を育てていく上で、間脳にある視床下部とその下にある下垂体は、きわめて重要な役割を持っています。この“視床下部-下垂体系”は、脳ホルモン”と“下垂体ホルモン”を分泌し、中枢神経系と内分泌系を協同的に調節して、成長と性成熟、産卵行動とをコントロールしています。多くの魚類では、産卵は周期的に行われ、そのリズムは多様性に富んでいます。魚類の産卵リズムに影響を及ぼす環境要因として、日長や水温、潮汐、社会的関係(群れ、縄張りなど)があります。これらの環境要因の情報が脳に伝えられて、視床下部-下垂体系の働きを調節すると考えられますが、そのしくみはまだよくわかっていません。
生育環境に合わせて行動や生理反応を調節する脳のしくみを明らかにするため、私たちは、沿岸域で“月周産卵回遊”を行うクサフグをモデルとして研究を進めています。クサフグは、春から夏の産卵期の大潮、すなわち新月と満月の日の満潮前に、海岸のある決まった場所に集合して産卵します。大潮の日は数日続きますが、その数日間、満潮前に産卵場に繰り返し回帰します。また、それが2週間周期で繰り返されます。クサフグの月周産卵リズムや産卵場への回帰行動を調節するしくみを明らかにするため、私たちは生殖機能を調節する脳ホルモンや松果体ホルモン、時計遺伝子、脳脊髄液タンパク質などに焦点をあてて研究を行っています。
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